#深夜の真剣文字書き60分一本勝負 2

◇テーマ:ココアはきっと甘いだろうよ
『無知の知』(オリジナル/現代)
誰だ、甘いなんて言ったのは。
そうだ、冷静に考えたら甘いはずなんてなかったのに。
そう思い込めたのは、幼さと狭量と楽観ゆえ。
香りの華やかさと見た目の奥床しさに惑わされて、いつの間にか本質を見誤っていたのだ。
含んでは思い知る、それこそが人の生の真実。

◇テーマ:両片思いの中間地点、息ができないほどに、囚われる
『重なる』(オリジナル/恋愛)
何気ない、本当に何気ないしぐさのひとつでしかない。
図らず追った姿の先、こちらに気づいて放たれた微笑み。
君は、それが私にどれほどの辛苦を与え、、甘い期待を抱かせるか、その一切を知るまい。
だからこちらも笑みを返す。
いつもどおり、無防備に、激しく早鐘の打つ中、ないまぜの涙をひた隠して。

◇テーマ:笹舟が行き着く先
『追憶の先に』(オリジナル)
着想、発案、意見、設定、勧誘、参加、探索、選別、教授、模作、工夫、習得、完成、吟味、対峙、作法、発令、競争、信頼、計略、機運、勝負、優劣、結実、反省、改良、発展、挑戦そして歓楽。
みんなそこにあった。すべてそこから学んだ。
やがてたどり着いた流れのその先で、私は人の生きる訓をも得る。

◇テーマ:伸ばした手、偶然、3回続けば必然
『わたしとあなたのあいだに』(オリジナル)
あなたとの面会は今日で3回目。
無言で後ろについて歩きながら、時折伺うように向けられる笑みに、私は心根からの微笑みを返す。
私達は元々他人同士だけれど、今ではもう、家族になることが必然のように思えて仕方ないの。
ふと伸ばした手に重ねられたそれは、あなたからの許しだと思っていいのかしら。

◇テーマ:嫌いじゃないだろ素直になれよ、重要なのは体積ではなく密度、その髪先を撫でる、熱情、時間切れ
『鑑、定める』(オリジナル/現代)
眼前の一盃に注がれた密度。
髪先を撫でる芳香に逸る気持ちを抑えつつ、しかしその微かな他との違いを判別せんと全霊を傾ける。
今必要なのは個人の好き嫌いではなく、客観性を維持した上での主観。
無心に己が舌の感覚に素直に対峙するのだ。
芳しく清む神の水、含み評する者の、それが幸喜であろうから。

◇テーマ:遠花火 あなただけの香り
『残香』(オリジナル)
覚えているかい?
若かったあの頃、人混みが苦手だと誘いの手を払い続ける君に、僕は「なら遠くから見ればいい」と誘ったね。
あの光の造形は、今年も変わらず上がっているよ。
二人で構えた居、縁側に漂う白檀の香り。
静かに瞑目すれば、瞼の裏に映る君の姿は、宵に覚める白い浴衣のまま何も変わらない。

inserted by FC2 system